気づきの種が、思索の木となり、やがて知の森となる。
日々の中に、静かに芽吹く気づきを。
今回は、こちらのひと粒をお届けします。
「ウィニコットは、母親が子どものことを完璧にわかっているという状態をよしとしていません。もしも子どものすべてを把握し子どもを満足させている母親がいれば、子どもの世界はそれだけで満ち足りてしまうでしょう。けれども、子どもが母親とずっと一緒にいることはできません。
だから母親はたまに失敗するくらいがちょうどいい。母親にはできないことがあり、時には間違ったことをする。子どもはそんな母親の姿を見ながらお母さんは万能ではないんだと知ることで、外の世界へと踏み出していけます。」出典:加藤 陽子; 鴻巣 友季子; 上間 陽子; 上野 千鶴子. 別冊NHK100分de名著 フェミニズム (pp.121-122). NHK出版.
イギリスの精神分析家・小児科医ウィニコットが提唱した
「ほどよい母親(good-enough mother)」という概念があります。
ここでいう「母親」は、性別にかかわらず、
子どもを育て、ケアする責任を引き受けた人のこと。
完璧でなくていい。
失敗したっていい。
できないことがあって、間違えてしまうときがあってもいい。
大事なのは、子どもを愛していること、
心配していることが伝わること。
子どもが不安になったとき、
戻ってきて安心できる場所であること。
むしろ、なんでも完璧に先回りして満たしてしまうと、
子どもの世界は「親だけ」で完結してしまうかもしれない。
親も万能ではないと知ることで、
子どもは少しずつ外の世界へ踏み出していける。
「いい親であろう」とがんばりすぎて、
つい自分を責めてしまいがちな私たちに、
この「ほどよい親」という考え方は、やさしい許しをくれる気がします。
🌱今日のひと粒
完璧じゃなくていい。
愛していることと、いつでも戻ってこられる場所でいること。
その「ほどよさ」が、子どもの世界を広げていく。

