🌱1分de知の種 Seed.24(2025.11.06)
~「利他」は、受け取られたときに生まれる~

気づきの種が、思索の木となり、やがて知の森となる。
日々の中に、静かに芽吹く気づきを。

今回は、こちらのひと粒をお届けします。

「『利他』は与えたときに発生するのではなく、それが受け取られたときにこそ発生するのです。
自分の行為の結果は、所有できません。あらゆる未来は不確実です。
そのため、『与え手』の側は、その行為が利他的であるか否かを決定することができません。
あくまでも、その行為が『利他的なもの』として受け取られたときにこそ、『利他』が生まれるのです。」

出典:中島岳志『思いがけず利他』(ミシマ社, p.97)

「なぜ君のために尽くしているのに、感謝もせず、そんな態度をとるのか。」
「いやいや、こっちは頼んでないし、ありがた迷惑だから。」

――そんなすれ違い、ありませんか?

自分は「よかれ」と思ってやっているのに、
相手はその気持ちを受け取ってくれない。
頼まれてもいないのに勝手にやって、勝手に傷つく。
パートナーとの関係では、そんなことがしばしば起こります。

相手を理解しているつもりだからこそ、すれ違ってしまう。
“理解しているつもり”が、実は誤解の始まりになるのです。

「利他とは、与えた瞬間ではなく、受け取られた瞬間に生まれる」

つまり、与える側には「利他を生み出す力」はない。
自分の行為が“よいこと”になるかどうかは、相手が決める。
だから、与える側は見返りを求めず、ただ誠実に“思わず身が動くこと”をするだけ。
そして受け取る側は、なるべくその行為を感謝をもって受け取る努力をする。
利他を成立させるのは、実は受け手の側なのです。

もちろん、それは簡単なことではありません。
何度もすれ違い、思い通りにいかないこともあるでしょう。

けれど、お互いが少しずつ対話を重ね、努力し、
“利他の循環”が生まれるとき、
パートナーシップは静かに、深く根を張っていくのだと思います。


🌱今日のひと粒

行為は与える側で終わらない。
受けとることで、はじめて意味を得る。
利他は、ふたりの努力のあいだに生まれる。

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